東海大学医学部付属病院遺伝子診療科

がんゲノム

がんゲノム医療とは?

がんは日本人の2人に1人がかかると言われている病気です。これまでがんは、がんのできた臓器、形態に基づいて分類されて診断されてきました。しかし、近年遺伝子の検査ができるようになってきたことから、がんの細胞で起きている遺伝子の異常を見て、その変化に基づいた治療が一部のがんで可能になってきました。つまり、がんのできた臓器、形態だけでなく、遺伝子変化を見ることも、治療にとって大事な情報を得る一つの手段になったのです。がんの医療に遺伝子情報が活かされる、これを「がんゲノム医療」と呼んでいます。

がん遺伝子パネル検査の実施施設

がん遺伝子パネル検査は今までになかった新しい検査です。2018年4月1日に厚生労働省は、この新しい検査を必要とする患者さんが全国どこにいても受けられるように、がんゲノム医療を推進する拠点として、この検査ができる施設を指定しました。東海大学医学部付属病院では2018年4月1日にがんゲノム医療連携病院に認定され、さらに2019年9月19日にがんゲノム医療拠点病院に認定され、現在このがん遺伝子パネル検査を実施しております。

がん遺伝子パネル検査の内容

がんの原因と関わっている数百種類の遺伝子について、異常がないかどうかを調べます。具体的な方法としては、手術等で取り出したがんの組織から、DNAを抽出し、通常とは異なる配列の遺伝子の変化を見つけます。がんの検体を用いてがん遺伝子パネル検査を行うことが難しい場合にかぎり、血液を用いた検査を行います。その後、遺伝子変化に対する治療薬の有無、実施中の臨床試験の有無を専門家が調べ、結果を担当の医師に報告します。

今までの研究データでは、がんの原因となる遺伝子の変化が見つかる可能性は50%程度、遺伝子変化に対する有効な治療が見つかる可能性は約10%と報告されています。必ずしも治療が見つかるわけではないことを、ご了承ください。

基本的には手術したがんの検体からDNAを抽出することになります。DNAの抽出に耐えられるようながん組織の保存が重要です。当院ではDNAの品質についても、事前に調べてから検査に出しています(2021年10月1日現在)が、検査を希望されても質的、量的に十分なDNA抽出ができない場合もあります。この場合は、血液による検査を検討いたします。これらのことをご了承の上、主治医にご相談ください。

対象となる方

検査を希望している患者さんは、以下の条件を満たす場合にがん遺伝子パネル検査が保険で認められています。(2021年10月1日現在)

がんの種類

  • 標準治療で効果がなかった固形がん*
  • 原発不明がん
  • 治療法が確立してない希少がん

*固形がん:血液・造血器以外のがんのことです。

身体の状態

上記のがんであり、全身の状態や臓器の状態からこの検査の後(約2ヶ月後)に化学療法を行うことが可能であると担当医が判断できる場合

当院のがん遺伝子パネル検査の種類

当院で実施しているがん遺伝子パネル検査の種類は以下の通りです。

1)OncoGuide™ NCCオンコパネル

がんに関連した124遺伝子を、がん組織と血液の両方で調べることで、がんの遺伝子変異を見つける方法です。がん組織と血液のDNAを並行して抽出・検査するために、遺伝性腫瘍(がんに罹りやすい体質)に関連したがんであると分かることがあります。

2)FoundationOne™ CDxがんゲノムプロファイル

がんに関連した324遺伝子を調べます。がん組織の検査のみで血液検査は必要ありません。遺伝性腫瘍であるがんの可能性は予測されることはあっても診断されることはありません。

3)GenMineTOP がんゲノムプロファイリングシステム

がんに関連した737遺伝子を、がん組織と血液の両方で調べることで、がんの遺伝子変異を見つける方法です。がん組織と血液のDNAを並行して抽出・検査するために、遺伝性腫瘍(がんに罹りやすい体質)に関連したがんであると分かることがあります。

4)FoundationOne™ Liquid CDxがんゲノムプロファイル

がんに関連した324遺伝子を、血液から抽出した遊離DNAを用いて調べます。血液検査のみでがん組織は必要ありません。腫瘍の細胞を検体としてがん遺伝子パネル検査を行うことが医学的に困難である場合のみ行うことができます。

5)Guardant360 CDx がん遺伝子パネル

がんに関連した74遺伝子を、血液から抽出した少量の遊離DNAを用いて調べます。血液検査のみでがん組織は必要ありません。腫瘍の細胞を検体としてがん遺伝子パネル検査を行うことが医学的に困難である場合のみ行うことができます。

* 自費のがん遺伝子パネル検査は行なっておりません。
(2024年4月1日現在)

  

がん遺伝子パネル検査の全体の流れ

  1. 当院の患者さんが検査を希望される場合は、まず主治医にご相談ください。
  2. がんゲノム外来の予約時間に来院してください。(場所:4F遺伝子診療科)
    医師、ゲノムコーディネーター(看護師)から検査の説明、カウンセリングを実施します。患者さんが同意した場合に検査の実施となります。
    *採血がある場合があります。
  3. 患者さんのがん細胞のDNAが抽出され、がんに関連する遺伝子の変化を探すために遺伝子配列を読み解く検査が検査会社によって実施されます。
  4. 検査結果のレポートが作成され、厳重な管理のもと、当院に返却されます。
  5. がんゲノム医療専門家スタッフが検査結果を読み解き、患者さんにとって有益な治療を探し、エキスパートパネルという会議で患者さんに推奨できる治療検討します。
    *がんゲノム医療専門家スタッフは病理診断医、がん薬物療法専門医、担当医、臨床遺伝専門医、分子遺伝学に詳しい医師のほか、研究者、バイオインフォマティシャン、薬剤師、認定遺伝カウンセラー、遺伝看護専門看護師、がん看護専門看護師などで構成されています。
  6. 治療方針決定したのちに、結果説明をさせていただきます。あらかじめ予約されていた再診日に、がんゲノム外来を受診してください。
    (場所:4F遺伝子診療科)
  7. 主治医のもと、治療が開始されます。
    * 臨床試験を希望する患者さんは、他の施設を紹介されることがあります。
      がんゲノム外来の流れ         

「厚生労働省健康局:ゲノム医療の提供体制における連携のあり方について」より抜粋

費用

当院で実施している3種類のがん遺伝子パネル検査は保健収載されています。 3割負担の場合は、いずれも自己負担額の合計が16万8000円です。費用は2回に分けてお支払いただきます。検査の同意をした日に13万2000円、検査の結果を説明した日に3万6000円をお支払いいただきます。これらの費用には検査料とがんゲノム外来診察料が含まれていますが、その他の診療を行った場合は再診料がかかることがあります。なお、検体の状態によっては検査を中断せざるを得ないことがありますが、その場合でも最初にお支払いいただいた費用を返却することはできませんので、あらかじめご承知おきください。

検査結果をお伝えできるまでの期間

がん遺伝子パネル検査はがんゲノム外来受診した日に検査に同意していただいた日から結果をお伝えするまで1〜2ヶ月の時間がかかります。理由としては、検査会社がDNAなどを抽出して検査結果を出すまでの3週間の期間に加えて、その結果をがんゲノム医療の専門家集団で何度か話し合いを行って、適切な治療について決定しているからです。

遺伝性腫瘍であるとわかった場合

遺伝性腫瘍であるとわかった場合、その血縁者も同じ遺伝子の変化を持つ可能性があります。本人はもちろんのこと、血縁者の方が、がんに関する遺伝に関心を持たれた場合にも、臨床遺伝専門医、認定遺伝カウンセラーなどによる遺伝カウンセリングや遺伝学的検査を受けていただくことができます。

*別途費用が発生します。

遺伝性腫瘍についてはこちらをご覧ください。

遺伝性腫瘍外来については外来案内をご覧ください。

がん遺伝子パネル検査をご希望の場合

当院に受診されている患者様の中で、がん遺伝子パネル検査をご希望の方はその旨を主治医にお伝えください。

当院に通院していない患者さんが、がんゲノム外来を受診するには、医療機関からの予約が必要になります。まずかかりつけの担当医師に相談してください。患者さんからの直接予約申し込みは受け付けておりません。